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61風沢中孚 ふうたくちゅうふ
中孚
八卦の
この卦は、二陰が内にあり、四陽が外にあるが、これは中虚の様子である。 また、下卦の兌を悦ぶとし、上卦の巽を従うとすれば、悦んで従う様子である。 また、巽を風とし、兌を沢とすれば、風が沢上を吹くときである。 なお、孚の字は、親鳥が卵(子)を爪でころがしながら暖めている様子だとされていて、親子の信を表現しているのだという。
【書き下し】中に孚あることは、豚魚にまでにすれば吉なり、大川を渉るに利ろし、貞しきに利ろし、 念のために言っておくが、ここに書いているのは、学校で習うような漢文の書き下しではない。 さて、豚も魚も共に無知な生物である。 しかしその孚信にも、善悪正邪の別がある。 何事も信じたら、とことんやることが大事なのであって、とことん信じること、それが孚信である。 としてもキリスト教などは、信じようとして聖書をきちんと読むと、却って矛盾だらけで信じるに足りないことがよくわかるものである。 そもそも江戸時代初期には、当時の儒者と宣教師が問答し、キリスト教が孚信を悪用する邪教であることが立証されていた。 これについては平成17年に『聖書と易学ーキリスト教二千年の封印を解く』という本に書いたのだが、その後版元の(株)五月書房が倒産して廃刊となってしまったので、その内容をweb用に一部修正して私のサイトで公開している。詳細は、「聖書の作者は古代中国の易学者だった」のページをご覧ください。 |
【書き下し】彖に曰く、中孚は柔内に在って、剛中を得て、説んで而して巽う、孚乃ち邦を化するなり、 この中孚という卦は、内側の三爻と四爻に二陰柔が在るが、これは中虚の孚すなわち信であって、九二と九五の陽剛が中正を得ているのは中実の孚すなわち信である。 【書き下し】豚や魚にまでとは、信豚と魚とに及べるなり、 中孚の孚すなわち信は、人間のみならず豚や魚にまでも行き届くものである。 【書き下し】大川を渉るに利ろしとは、木の舟の虚なるに乗ればなり、 兌を大川とし巽を木とし、またこの卦全体は大離(爻を二本で一本として見ると離の象だからこう云う)の虚舟とすれば、木製で中が虚の舟に乗って大川を渉るという象義が読み取れる。 【書き下し】中孚に利貞を以ってするは、乃ち天に応ずればなり、 中孚の信にも正と不正とがある。例えば橋の下で孚信を以って女性と待ち合わせ、やがて大雨になって川が増水しても約束したのだからとその場所を動かずに溺れ死ぬようなことは不正であって、してはいけないことである。
【書き下し】象に曰く、沢の上に風有るは、中孚なり、君子以って獄えを議り死を緩くすべし、 兌の沢の上に巽の風があるのが中孚という卦である。 |
上九━━━ 【書き下し】初九は、虞らなれば吉なり、佗有れば燕からず、 【書き下し】象に曰く、初九は、虞らなれば吉なりとは、志未だ変ぜざればなり、 初九は孚信の初めに在って、正の位を得て、六四の爻に応じている。
上九━━━ 【書き下し】九二は、鳴鶴陰に在り、其の子、之に和す、我に好爵有り、吾爾と与に之を摩せん、 【書き下し】象に曰く、其の子、之に和すとは、中心に願えばなり、 通本は摩を靡とするが、中州は「子夏易伝」を根拠に、正しくは摩だとして、解釈している。 鳴鶴とは、鶴の親が鳴くこと、在陰とは夜陰のこと、其子とは雛鶴のこと、和之とは親鶴に応えて鳴き、親鶴に和すること。 さて、この卦は下卦の正兌と上卦の倒兌(=巽は逆方向から見ると兌になる)と、二つの兌が向かいあっている。 親鶴とは、卦においては上卦倒兌の象とし、爻においては九五の象である。 続く辞は、九五の親が九二の子を呼んで、我に好い爵禄が有り、これは信の徳を以って得たものであるから、今後も信の徳を以ってこれを承け保つべきであって、願わくば、吾と爾と共に、この信の徳を琢磨して、この爵禄信徳を保ち守りたい、と教え戒しめているのである。 我と吾の字は、共に五が自ら称して、九二の爻へ言いかけているのであり、爾とは九二を呼んでいるのである。 また、この言葉は、親子と同時に君臣の信を諭してもいる。
上九━━━ 【書き下し】六三は、敵を得たり、或るときは鼓うち、或るときは罷め、或るときは泣き、或るときは歌うたう、 【書き下し】象に曰く、或るときは鼓うち、或るときは罷むとは、位当たらざればなり、 六三は卦においては中虚の位置にして、自らの確乎とした信念はなく、また陰柔でありながら陽位に居るので、単に孚信なる者である。
上九━━━ 【書き下し】六四は、月望に幾し、馬の匹いを亡えば、咎无し、 【書き下し】象に曰く、馬の匹いを亡えよとは、類いを絶して上れよとなり、 今、孚信の時に当たって、六四の執政の大臣は、君に近い位に居て、柔正の徳を得て、九五の君とは陰陽正しく承け比し、親しみ仕えている。 続く辞の馬とは、初九を指し、匹とは匹偶の類の義にして、四爻と初爻とが応の位にあるを以って匹と言う。
上九━━━ 【書き下し】九五は、孚有って恋如たり、咎无し、 【書き下し】象に曰く、孚有って恋如たりとは、位正当なればなり、 今、孚信の時に中って、九五は君の位に居て、中正を得ている。
上九━━━○ 【書き下し】上九は、翰音天に登る、貞くすれば凶なり、 【書き下し】象に曰く、翰音天に登る、何ぞ長かる可きとなり、 上九の爻は、孚信の卦の極に居るとしても、不中不正にして信を失っている者である。 人として不信なることがこのようであれば、その宜しいわけがない。 |
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ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。 |
最終更新日:令和04年04月03日 学易有丘会
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