|
赤はA列、緑はB列、オレンジ色はC列、空色はD列との繋がりを示すが、複数の列と繋がっている場合は、適宜塩梅している。
表中、天之御中主神から天之常立神までを「別天神五柱」、国之常立神から伊邪那岐神・妹伊邪那美神までを「神世七代」と示しているが、それは『古事記』がそう呼んで分類しているのにしたがったものである。
ただし、このうちの伊邪那岐神・妹伊邪那美神以外は、ただ『古事記』にその名が連ねてあるだけで、何ら物語らしい物語はない。
また、『日本書紀』のこの部分の記述では、神々の登場順序が異なる上に、異伝も示されているので、どの順を取ればよいのか判然としない。
要するに『日本書紀』の態度は、暗号攪乱のためであるかのようなのである。
だからこそ、『古事記』の順にしたがったのである。
なお、「別天神五柱」は、正式には「別天神五柱」と読むものなのだが、これから話す内容においては、正式に読む必要はないので、意味を汲んで簡略にルビを振ることにした。
また、神世については、神武天皇の父親から、時代を遡りつつ関係を見て行く。
〇 天津日高日子波限建鵜葺草葺不合命
A列3䷂水雷屯 B列29䷜坎為水
この命は神武天皇の父親である。
上の天津日高日子の部分は、この命、神武天皇の祖父の穗穗手見命、曽祖父の邇邇芸命に共通するが、この六文字は何れの命の位置でも繋がらない。
続く波限建鵜葺草葺不合の九文字のうち、波と建は、波は水面に出来ることから水を意味する☵坎(水)、建は22雄略天皇と同様に、建御雷神という神名があることにちなみ☳震(雷)とすれば、A列3䷂水雷屯を示していることになる。
続く葺草葺の三文字は、左図のようにB列29䷜坎為水を示している。
葺草葺を分解すると、「艸・口・耳、艸・日・十、艸・口・耳」となり、それぞれを易の卦に置き換えると、艸は草冠だから草を意味し、草は風に靡いて地に伏すことから易では☴巽(風)に配され、口は☱兌(沢)、耳は☵坎(水)、日は☲離(火)、十は☷坤(地)となる。
これを順に並べると、次のように読める。
草が示す三つの卦☴☲☷巽離坤(風火地)は、20䷓風地観の中に☲離(火)が包み込まれている形だから、☲離(火)を隠して見よ、との指示と受け取れる。
この場合の☲離(火)は、葺の字の艸が示す☴巽(風)と口が示す☱兌(沢)を合わせて二本ずつまとめた形以外にない。
そこで二組ある艸口の☴☱巽兌(風沢)を隠し、これを指示する草の艸日十の☴☲☷巽離坤(風火地)を取り除く。
すると耳が二つだけ残り、耳は☵坎(水)が示す事象だから、☵坎(水)を二つ重ねたB列の29䷜坎為水が浮上する。
残る限・鵜・不合の四文字は繋がらない。
〇 天津日高日子穂穂手見命
A列2䷁坤為地 B列28䷛沢風大過
この神名はA列ともB列とも繋がらない。
しかしA列の2䷁坤為地は大地を意味するわけだが、この命が地上で生まれた最初の皇祖であることと一致する。
ちなみに父親の邇邇芸命は高天原すなわち天上界生まれである。
〇 天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能邇邇芸命
A列1䷀乾為天 B列27䷚山雷頤
名前の後ろの方の邇邇芸は『紀』で瓊瓊杵と表記していて、瓊に(ケイ)は美しく陽気が満ち溢れた玉を意味する字だから、八卦で表現すれば☰乾(天)となる。
これについては7孝霊天皇の賦斗邇の邇の解釈でも触れた。
が、とにかくこの邇を重ねた瓊瓊である邇邇は、☰乾(天)を重ねたA列1䷀乾為天となる。
名前の前の方、天邇岐志国邇岐志天津日高日子番能の部分は繋がらない。
ただし天孫降臨の物語はB列27䷚山雷頤を連想させる。
これについては本編の6、神世と六十四卦の序次で触れたので、ここでは省略する。
〇 正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命
A列64䷿火水未済 B列26䷙山天大畜
この神名は、まず、頭の正の字に注目する。
正の字は、ご存知のように、数を数えるときに使ったりする。
小学校の学級委員の選挙のときなど、投票数を数えるときに黒板に正の字を書いて数えた経験は多くの人にあるだろう。
それと同様に、正の字は五という数のこととすれば、この正の字の次から五文字をまとめよ、という指示と考えられる。
そこで、正の次からの五文字、勝吾勝勝速に注目する。
勝と速は、陰陽を考えれば、勝が陽、負が陰、速が陽、遅が陰で、勝と速は共に陽だから、それぞれ一本の陽⚊に置き換えられる。
吾は五と口に分ければ、五は☴巽(風)、口は☱兌(沢)で共に少陰⚋だから、合わせて二本の陰となる。
これを順に並べれば左図のように、勝吾勝勝速でB列26䷙山天大畜となる。
下に続く日天之忍穂耳のうちの、日と耳は、日は☲離(火)、耳は☵坎(水)だから、この二文字でA列64䷿火水未済となる。
残る天之忍穂の四文字は繋がらない。
〇 天照大御神
A列63䷾水火既済 B列25䷘天雷无妄 D列13䷌天火同人
天照大御神とD列については、6、神世と易六十四卦で詳しく書いているので、ここでは省略する。
《これより神世七代》
〇 伊邪那岐神・妹伊邪那美神
A列62䷽雷山小過 B列24䷗地雷復 C列24䷗地雷復 D列12䷋天地否
伊邪那岐神・妹伊邪那美神とC列についてとは、7、伊邪那岐神・妹伊邪那美神と一陽来復で詳しく書いているので、ここでは省略する。
〇 於母陀流神・妹阿夜訶志古泥神
A列61䷼風沢中孚 B列23䷖山地剥 C列2䷁坤為地 D列11䷊地天泰
於母陀流という音の響きは、何やらゆったりとした流れを連想させるが、とすれば空気の流れである風すなわち☴巽(風)の表現と受け取れ、訶志古泥は「堅固な土」とすれば、それを易では☱兌(だ)で表現する。
☱兌(沢)の最上の一陰⚋を、大地の表面にひびが入った様子とするので、水気がなくなった堅固な土という意味を持つ。
したがって於母陀流・訶志古泥でA列61䷼風沢中孚となる。
残る阿夜は、文のこととすれば、☷坤(地)の持つ意味となる。
☷坤(地)は八卦の中で最も細かく分かれた図形であることから、文=文模様を意味する。
䷁坤為地はその☷坤(地)を重ねた形である。
〇 意富斗能地神・妹大斗乃辨神
A列60䷻水沢節 B列22䷕山火賁 C列23䷖山地剥 D列10䷉天沢履
大斗乃辨の辨の字には「切り分ける」という意味があるから、「大斗で切り分けよ」との指示と受け取れる。
なお、辨は弁の旧字体なのだが、新字体は辨・瓣・辯という意味が異なる字を統合して弁としたものなので、ここでは敢えて原文に従い旧字体の辨を使った。
大斗は意富斗と読みが共通する。
大を万葉仮名で書くと意富となる。
そこで、意富斗能地を意富斗と能地に切り分ける。
まずは前半の意富斗を見る。
意富は大のことだから同じ事象を指し、大は陽だから(小が陰)その極みの☰乾(天)、斗は柄杓すなわち水を量り分ける道具だから☱兌(沢)となる。
したがって、大斗と意富斗は、共にD列10䷉天沢履を示していることになる。
後半の能地は、能は熊を意味する文字であり、熊は山に居て人の行く手を阻み止める動物として☶艮(山)とすれば、地は☷坤(地)だから、能地と合わせてC列23䷖山地剥を示していることになる。
ちなみに能は、万葉仮名としては「の」の音の字として使われ、漢文としては「あたう」とか「よく」といった意で使われる字であるが、奈良時代の漢文を嗜む人々には読まれていたであろう辞書の『説文解字』(能部6377)には、能は熊の属とある。
〇 角杙神・妹活杙神
A列59䷺風水渙 B列21䷔火雷噬嗑 C列20䷓風地観 D列9䷈風天小畜
この二神は角、活、杙の三文字で、次のようにB列21䷔火雷噬嗑の卦の形の表現となる。
角は頭上にある堅い物だから、最上が陽であることを意味する。
例えば、35䷢火地晋の最上の記号の位置の意義を説明する文章には、「晋其角=晋のとき、其の角なり」、
44䷫天風姤には「姤其角=姤のとき、其の角なり」などとある。
活は水が勢いよく流れる様子を意味する文字だから水を示す☵坎(水)となる。
杙(杭)は地面に垂直に建てる棒だから陽⚊の上に陰⚋を重ねた形を連想させる。下の陽⚊が地面、上の陰⚋の真ん中の切れ目がその地面に建つ垂直な棒のイメージである。
これらを順にならべると、左図のようにB列21䷔火雷噬嗑となるのである。
また、この卦はもともと「噛み砕いて食べる」という意味があるわけだが、「杙」と読む時の響きには、「食」という言葉に相通じるものもある。
〇 宇比地邇神・妹須比智邇神
A列58䷹兌為沢 B列20䷓風地観 C列12䷋天地否 D列8䷇水地比
この二神の神名は、漢字の意味ではなく音だけを拾って並べたいわゆる万葉仮名だから、別の意味のある漢字に置き換えながら考える。
まず、双方の頭の宇と須を合わせると宇須になるが、これを臼のこととすれば、餅をつく臼は上に窪みがあることから、易ではこれを☱兌(沢)とするので、その☱兌(沢)を二つ重ねたA列58䷹兌為沢を示していることになる。
続く比の字は、D列8䷇水地比の卦名の「比」そのものである。
と同時に、下の地邇と智邇を合わせると、邇は邇邇芸命のときと同様に☰乾(天)、智は地の音の借用として地と共に☷坤(地)の表現とすれば、比地邇、比智邇は共に比地天となる。
そして、この神名は万葉仮名風の文字の使い方なので、11垂仁天皇の国風諡号のときと同様に、これを「本来の漢文を想定して文字の順を逆にせよ」という指示と受け取り、この比地天の順を逆にして天地比とした上で、9開化天皇の国風諡号の大毘毘の時のように、比を否の音の借用とすれば、C列12䷋天地否となる。
〇 豊雲野神
A列57䷸巽為風 B列19䷒地沢臨 C列33䷠天山遯 D列7䷆地水師
この神名は「野に浮かぶ豊かな雲」を連想させるが、雲は風が運ぶものだから☴巽(風)の表現となる。
A列57䷸巽為風は、この☴巽(風)が二つ重なった形、C列33䷠天山遯は、六本の記号を二本で一本と見なせば、これも☴巽(風)である。
〇 国之常立神
A列56䷷火山旅 B列18䷑山風蠱 C列44䷫天風姤 D列6䷅天水訟
この神名は、A〜D列の何れとも繋がらない。
《これより別天神五柱》
〇 天之常立神
A列55䷶雷火豊 B列17䷐沢雷随 C列1䷀乾為天 D列5䷄水天需
頭に天之とあるが、天は☰乾(天)である。
C列1䷀乾為天は、その☰乾(天)だけを二つ重ねた形である。
残る常立は各列何れにも繋がらない。
〇 宇摩志阿斯訶備比古遲神
A列54䷵雷沢帰妹 B列16䷏雷地予 C列43䷪沢天夬 D列4䷃山水蒙
この神は、本文に葦牙のようなものによって生まれたとあるので、阿斯訶備は葦牙=葦の芽吹きの様子の神格化とすれば、芽吹き=生まれたて=幼い=童蒙と連想できるので、D列4䷃山水蒙と繋がる。
しかし、他の部分はどの列とも繋がらない。
〇 神産巣日神
A列53䷴風山漸 B列15䷎地山謙 C列34䷡雷天大壮 D列3䷂水雷屯
この神名はA〜D列の何れとも繋がらない。
〇 高御産巣日神
A列52䷳艮為山 B列14䷍火天大有 C列11䷊地天泰 D列2䷁坤為地
産の字は生産を意味するから、C列11䷊地天泰の万物生成の意味と合うが、他の部分は繋がらない。
〇 天之御中主神
A列51䷲震為雷 B列13䷌天火同人 C列19䷒地沢臨 D列1䷀乾為天
天之常立神と同様に、天は☰乾(天)とすれば、D列1䷀乾為天を連想させる。
と同時に、5孝昭天皇のときと同様に、御を数の三のこととすれば、三は☲離(火)だから、天と御でB列13䷌天火同人を示していることになる。
残る部分はどの列の卦とも繋がらない。
別天神五柱は、神世七代に比べてあっさりとした関係がちょっとあるだけではあるが、それでもこのような関係があるからには、ここまでのすべてが、A〜D列にしたがって数を揃えたものだとしか言えない。
しかし、なぜ、そこまでこだわったのだろうか?
その答えは、このA〜D列までを図にしてみて、なるほど!と思い当たった。
以下、本編第2章7の「円を描く皇統譜」に続く。
追補1 追補2 ページTOP
|