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36地火明夷 ちかめいい
八卦の
【書き下し】明夷は、艱しんで貞しきに利ろし、 この卦は、君子は小人に 周の文王は、六十四卦の卦辞を作った人物である。 紂王は民衆を酷使し、自らは酒池肉林の乱痴気騒ぎを楽しみ、それを諫める者は片っ端から征伐していたので、誰も咎めることはできなかった。 一方の箕子は、紂王の叔父であり親族内戚なのだが、君子たる人間を目指していたので、その非道を不愉快に思っていた。 外様大名と親族内戚では、手段はことなるが、とにかく二人共、このように明夷の時局を艱難して貞正を守り通したのであって、そういう思いが、艱しんで貞に利ろし、という言葉となったのである。 |
【書き下し】彖に曰く、明夷は、艱しんで貞しきに利ろしとは、其の明を晦せよとなり、 艱しんで貞しきに利ろしというのは、明夷の時は聖賢君子が昏暗の小人のために傷害を受ける時運なので、君子たる者は、先ずしばらくその明を晦まし、徳を隠し、光を慎み、愚を装い、以って暗主小人の傷害を避けるべきである。 【書き下し】内文明にして、而も外楽順にして、以って大難を蒙る、文王之を以いたり、 周の文王は、殷末のとき、強大な力を持つ言うなれば外様大名だったのだが、酒池肉林で有名な紂王という明夷暗主の時に遇い、内には文明貞正の徳を修めていても隠して敢えて出さず、外は柔順の臣節を尽くして、以って時運の大難に安んじ処していた。 【書き下し】内に難みあれども、而も能く其の志を正しくすべし、箕子之を以いたり、 一方、紂王の叔父に当たる箕子は、親族身内ということもあり、自分は貞正を志しても、紂王から非道を命じられたら従わないわけにはいかないので、気が触れたように装って、難を逃れた。
【書き下し】象に曰く、明、地中に入るは、明夷なり、君子以って衆に莅むに、晦きを用いて、而して明なるべし、 易位生卦法によると、火地晋で未だ明が地中に入らない時は、君子は明らかに道に進む時だが、今その明が地中に入ったので、明夷の時とする。 |
上六━ ━ 【書き下し】初九は、明夷のとき于に飛ぶ、其の翼を垂れん、君子于に行けども、三日まで食わず、往る攸有れば、主人言有らん、 【書き下し】象に曰く、君子于に行るとは、義として食せざれよとなり、 この卦は、離明な者が坤暗な者に傷(やぶ)られ、内卦は外卦のために傷やれ、下の三爻は上の三爻のために傷やれる義とする。
上六━ ━ 【書き下し】六二は、明夷のとき左の股を夷らる、用いて拯え、馬壮んなれば吉なり、 【書き下し】象に曰く、六二の吉なりとは、順にして則あるを以ってなり、 明夷のときに当たって、六二は六五に害応され、そのために大に傷害を受ける。
上六━ ━ 【書き下し】九三は、明夷のとき于に南狩す、其の大首を得ん、疾く貞しくせんとす可からざれ、 【書き下し】象に曰く、南狩の志とは、乃ち大いに得るとなり、 明夷の時に当たって、九三と上六は、相害応して、それがために傷られる。 さて、上六は卦極に在って威を振るい、勢いを盛んにして、その党与もまた多い。
上六━ ━ 【書き下し】六四は、左の腹に入り、明夷の志を獲たり、于に門庭を出よ、 【書き下し】象に曰く、左の腹に入るとは、心意を獲たるとなり、 明夷の象は、全卦について観るときは下卦三爻が傷害を被る者とし、上卦三爻が、これを傷害する者とする。 さて、この六四は、明夷の時に当たって、傷害する主である上六と、一卦の内に連なり居る。
上六━ ━ 【書き下し】六五は、箕子が明を夷らるるときは、貞しきに利ろし、 【書き下し】象に曰く、箕子がごとくこれ貞しかれとは、明は息む可からざれとなり、 上六は坤の至って暗い極に居って、好んで賢を毀い、明を夷る主である。 箕子は紂王の叔父に当たる政治家で、その才力はとても優れていた。 六五は、この箕子のように、その行いがどんなに正当であっても、不用意に行えば、たちどころに禍害に至る、という状況なのである。
上六━ ━○ 【書き下し】上六は、明ならず晦し、初は天に登るがごとく、後には地に入る、 【書き下し】象に曰く、初めは天に登るとは、四方の国を照らせばなり、後には地に入るとは、則を失えばなり、 上六は、至暗の坤の卦の極に居る。 |
究極の易経解説 メニュー 01.乾為天 02.坤為地 03.水雷屯 04.山水蒙 05.水天需 06.天水訟 07.地水師 08.水地比 09.風天小畜 10.天沢履 11.地天泰 12.天地否 13.天火同人 14.火天大有 15.地山謙 16.雷地予 17.沢雷随 18.山風蠱 19.地沢臨 20.風地観 21.火雷噬嗑 22.山火賁 23.山地剥 24.地雷復 25.天雷无妄 26.山天大畜 27.山雷頤 28.沢風大過 29.坎為水 30.離為火 31.沢山咸 32.雷風恒 33.天山遯 34.雷天大壮 35.火地晋 36.地火明夷 37.風火家人 38.火沢睽 39.水山蹇 40.雷水解 41.山沢損 42.風雷益 43.沢天夬 44.天風姤 45.沢地萃 46.地風升 47.沢水困 48.水風井 49.沢火革 50.火風鼎 51.震為雷 52.艮為山 53.風山漸 54.雷沢帰妹 55.雷火豊 56.火山旅 57.巽為風 58.兌為沢 59.風水渙 60.水沢節 61.風沢中孚 62.雷山小過 63.水火既済 64.火水未済 |
ここに書いているのは、江戸後期の名著、眞勢中州の『周易釈故』より抜粋し、現代語で意訳したものです。 |
最終更新日:令和04年04月03日 学易有丘会
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