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漢文として楽しむ論語 郷黨第十 2/3トップページ 論語序説(朱子による孔子の略歴) 學而第一 爲政第二 八佾第三 里仁第四 公冶長第五 雍也第六 述而第七 泰伯第八 子罕第九 郷黨第十 先進第十一 顔淵第十二 子路第十三 憲問第十四 衞靈公第十五 季氏第十六 陽貨第十七 微子第十八 子張第十九 堯曰第二十 6(241) 君子不以紺緅飾…
○ 【書き下し】君子は紺緅を以って飾らず、紅紫は以って褻の服にも為ず、暑に当たって袗の絺綌すれば、必ず表いにして之を出だす、 【訳】孔子は紺色と薄赤い色を襟や縁の飾りにはしなかった。紅と紫は間色であるとともに艶麗にして婦人の服に近いので、この二色は普段着にも用いなかった。夏の暑いときには単衣の葛布の服を着たのだが、その際、必ず下重ねを着た上に、その葛布の服だけが外に出るように表を覆い、できるだけ肌を見せないようにした。 【解説】ここでは孔子の衣服について記す。君子は孔子を指す。ただし孔子だけではなく、君子一般の服装でもあるので、君子と云っている。紺は紺色、俗に云う烏羽色のこと。これは斉戒の服色である。緅は薄赤い色、これは三年の喪の、小祥の練服の下重ねにする色。この斉喪の服に使う二色を常服に用いないことで、服についての礼を乱さないようにした。また、紅は今の桃色のことで、この色と紫は間色であって、正色ではない。正色は赤青黄白黒の五色のこと。褻服は普段着、作業着のこと。絺綌は葛の繊維で織った古の暑い時に着る単衣の服で、織り糸が細いのを絺、太いのを綌と云う。 【書き下し】緇衣には羔の裘、素衣には麑の裘、黄衣には狐の裘、褻の裘は長し、右の袂を短くす、必ず寝衣有り、長一身有半、 【訳】羊の毛皮を着るときはその上から黒い衣を着て、鹿の子の毛皮を着るときはその上から白い衣を着て、狐の毛皮を着るときはその上から黄色い衣を着た。普段着の毛皮は暖かさのために丈が長いが、腕が動きやすいように右の袂は短くしてある。寝るときの衣は身長の1.5倍の長さがあり、足先まで十分に覆うようになっている。 【解説】緇は黒、羔は黒羊、裘は毛皮。素は白、麑は鹿の子。緇衣、素衣、黄衣は裘の上に着て毛を隠す物。褻裘は普段着の毛皮。礼装の裘は膝までの長さだが、普段着は暖かさのためにさらに長い。なお必有寝衣長一身有半の部分は、後の齊服について記す所の錯誤だともされる。 【書き下し】狐貉の厚きを以って居り、喪を去いては佩ずという所無し、帷裳に非ざれば、必ず之を殺ぐ、羔裘玄冠を以って弔せず、吉月には、必ず朝服して朝す、 【訳】キツネやムジナの毛が深い毛皮は外出には重いが、厚いので家の中で着るのによい。喪の時を除き、常に帯には装飾物をつけた。朝祭などに着る帷裳以外の服は、裾が広くひだもなく切り込みを入れて簡易に作ったものだった。黒い毛皮に黒い冠は弔うときには使わない。黒は吉色、白が凶色だから、弔いは白にする。月朔には、退いた後も必ず朝服を着て朝拝した。 【解説】狐はキツネ、貉はムジナ、狐貉の毛皮は毛が深くて厚く重い。礼装の裘は軽いほうがよいが、家に居るときに着るものは暖かさのほうが重要になる。佩は帯につける装飾物。帷裳は朝祭の服で手が込んだ作りになっている。それ以外の普段に着る服は裾が広くひだがなく殺いで作る。殺ぐは裁縫用語で切り込むことらしい。玄冠は黒いかんむり。吉月は毎月の一日、朔日を云う。月の光は晦に死して朔に生ずるので吉と云う。朝服は朝参の服。仕えるのを辞めた人の多くは、もう月朔にも公に朝拝しなくなるのだが、孔子は退いた後もこの礼を捨てなかった。 7(242) 齊必有明衣布…
○ 【書き下し】斎するときは必ず明衣有り、布をす、必ず寝衣有り、長一身有半、斉するときは必ず食を変ず、居ること必ず坐を遷す、 【訳】斎戒のときは、必ず白布で作った明衣を着る。寝るときの衣は身長の1.5倍の長さがあり、足先まで十分に覆うようになっている。斎戒のときは必ず食事も変える。常の居室から移って斎室にこもる。 【解説】ここでは斎戒について記す。布は麻で織った布のこと。明衣は麻で織った白布で作り、縛る紐は衣には黒色、裳には赤色を使った服。明は明潔ということ。斎戒には必ず沐浴をし、その後に明衣を着る。変食は、その期間は酒を飲まず、臭いのあるネギやニンニク等の類を食べないといったこと。なお前出の必有寝衣長一身有半はここにあるのが正しいとされる。 8(243) 食不厭精…
○ 【書き下し】食は精ぐに厭かず、膾は細きに厭かず、 【訳】米はちゃんと精米した白米がよいが、なければ玄米のままでもよい。膾は細いほうがよいが、多少太くても文句は言わない。 【解説】ここでは飲食についてを記す。しらぐは精米して白米にするという意。不厭は、できれば〇〇のほうがよい、といった程度であって、必ずしもそれでなければならないとまでは決めつけないこと。膾とは、肉を生のまま切って干したもの。 【書き下し】食の饐して餲し、魚の餒れて肉の敗れたるを食らわず、色の悪しきを食らわず、臭いの悪しきを食らわず、 【訳】ご飯のすえて味が変になったもの、魚や肉の腐ったものは食べない。まだ腐ってなくても、色が悪いものや臭いが悪いものは食べない。 【解説】饐はすえた、餲は味が変になった、魚餒は腐った魚、肉敗は腐った肉のこと。 【書き下し】飪を失えるを食らわず、時ならざるを食らわず、割の正しからざれば食らわず、其の醤を得ざるは食らわず、肉多しと雖も、食の気に勝た使めず、 【訳】生煮えだったり煮過ぎたりしたものは食べない、時期ではないものは食べない。切り方が正しくない肉魚は食べない。その食材に適した調味料が使われていないのであれば食べない。肉が多くあっても、主食の五穀のオカズとして適度にしか食べない。 【解説】不時は季節外れ、食べる時期ではないも。割不正は肉や魚の捌き方が不正なことで、血が混じったり内臓や腸がきちんと処理されていないものは不味いし、場合によっては健康を害することもある。醤は調味料のこと。沽は売るという意。脯は干し肉。 【書き下し】ただ酒は量無し、乱るるに及ばず、沽る酒、市る脯は食らわず、薑は撤ずして食らう、多く食わず、 【訳】ただし酒は好きなだけ飲む。しかし乱れるほどは飲まない。売っている酒や干し肉は食べない。生姜は下げさせずに食べる。何でもほどほどにしか食べない。 【解説】この時代、田禄がある者は、酒や干し肉は自宅で作っていたので、外で売っているものは食べなかった。不潔だったり、売る人に悪意がある場合もあるからだ。薑は生姜のこと。 【書き下し】公に祭ては、肉を宿せず、祭の肉、三日出さず、三日を出るときは之を食らわず、 【訳】祭が終わってお供えの肉を分け与えられると、その日のうちに持ち帰り、当日のうちに、すぐ家の衆にわけた。祭の肉は消費期限三日である。過ぎたら食べない。 【解説】祭は魯君の廟の祭のこと。祭に助勤するとお供えを撤下した品々を分け与えられるのだ。 【書き下し】食するときは語らず、寝るときは言わず、蔬食菜羮と雖も瓜ず祭る、必ず齊如たり、 【訳】食事中は議論しない。寝床に入ったら喋らない。おかずは野菜だけを煮た粗末な食事だとしても、必ず少しずつ取り分けてご先祖様にお供えして厳かに慎み、その祭儀をしてから食べる。 【解説】瓜の字は必の錯誤だとされる。祭必齊は、日本的に言えば、食事の際には必ず少しずつ取り分けて神棚あるいは仏壇にお供えする、といった意。 9(244) 席不正不坐
○ 【書き下し】席、正しからざれば、坐らず、 【訳】座席の敷物がきちんと置かれていなければ、座らない。 【解説】席はむしろ、敷物のこと。敷物の置き方が曲がっていたら、きちんと直してから座るということ。 |
最終更新日:令和02年10月21日
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