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漢文として楽しむ論語 憲問第十四 3/5トップページ 論語序説(朱子による孔子の略歴) 學而第一 爲政第二 八佾第三 里仁第四 公冶長第五 雍也第六 述而第七 泰伯第八 子罕第九 郷黨第十 先進第十一 顔淵第十二 子路第十三 憲問第十四 衞靈公第十五 季氏第十六 陽貨第十七 微子第十八 子張第十九 堯曰第二十 18(350) 子貢曰管仲非仁者與…
○ 【書き下し】子貢の曰く、管仲は仁者に非ざるか、桓公、公子糾を殺すときに、死すること能わず、また之に相たり、 【訳】子貢が言った。管仲は仁者ではないでしょう。桓公が公子糾を殺したときに殉死せず、その後に桓公の宰相となったのだから。 【解説】子貢も子路と同様の疑問を持ったのだ。 【書き下し】子の曰く、管仲、桓公に相として諸侯に覇たり、一つに天下を匡しくす、民、今に到るまで其の賜ものを受く、 【訳】先生が仰った。管仲は桓公の宰相として、諸侯の長として令を下すことで、天下をひとつに正しくまとめたのだ。そのおかげで民は、今に至るまでその恩恵を受けているのだ。 【解説】覇は諸侯の長として令を下す者。 【書き下し】管仲微つせば、吾れ其れ髪を被り衽を左にせん、豈、匹夫匹婦の諒を為して、自ら溝涜に経りて之を知ること莫きが若くせんや、 【訳】もし管仲がいなかったら、この私も髪を結わず、衣の襟を左合わせに着ていただろう。もし夫婦差し向かいの庶民が好む義理人情にとらわれ、溝の中ででも首を括って死んでいたら、世に管仲を知る者はいなくなる。そんな無益な死に、何の意味がある。 【解説】微は「もし、〇〇がなかったら」といった意で、「なかつせば」と読む。被髪は、髪を結って整えないこと、左衽は衣の襟を左合わせにすること、共に夷狄の風俗である。 19(351) 公叔文子之臣大夫僎…
○ 【書き下し】公叔文子が臣、大夫僎、文子と同じく諸侯に升る、子これを聞いて曰く、以って文と為す可し、 【訳】公叔文子の家臣の僎という者が大夫となって文子と共に衛の公朝に進み升って同列となった。先生がこれを聞いて仰った。文という諡に相応しい人物だ。 【解説】公叔文子は衛の大夫公孫枝、文は諡。文子は僎が賢者なのを見て、大夫に進め上げたのだ。 20(352) 子言衞靈公之無道也…
○ 【書き下し】子、衛の靈公の無道なることを言う、康子が曰く、それ是の如くんば、奚ぞ喪わず、 【訳】先生が衛の霊公の無道なことについて仰った。康子が言った。それでもどうして国が滅びなかったのでしょうか。 【解説】康子は季康子、魯の大夫、季桓子の後を継ぎ、筆頭家老となった。 【書き下し】孔子の曰く、仲叔圉、賓客を治め、祝鮀、宗廟を治め、王孫賈、軍旅を治む、夫れ是の如くは、奚ぞ其れ喪わん、 【訳】孔子が仰った。仲叔圉の外交手腕、祝鮀の宗廟と政事を治め、王孫賈が軍隊を治めたからだ。この三人の臣は必ずしも賢者ではないが、それぞれの分野での才能があったから、無道であっても国を喪うことはなかったのだ。 【解説】仲叔圉は公叔文子のこと。祝鮀は、祝は宗廟の官の名、鮀はその名、衛の大夫。王孫賈は周の靈王の孫、名は賈、衛に仕える大夫。 21(353) 子曰其言之不怍…
○ 【書き下し】子の曰く、其の之を言うこと怍ざるときは、則ち之を為ること難し、 【訳】先生が仰った。口まかせに大言を吐き、心に羞恥の情がないのなら、その言ったことを実行するのは難しい。 【解説】志もなく、自らその能力もないのに平然と口にすることを戒めている。 22(354) 陳成子弑簡公…
○ 【書き下し】陳成子、簡公を弑せり、孔子、沐浴して朝し、哀公に告げて曰く、陳恆、其の君を弑せり、請う、之を討せん、公曰く、夫の三子に告げよ、 【訳】陳成子が簡公を殺した。孔子は沐浴して身を清めて朝廷に出向き、哀公に告げて仰った。陳恒がその君を殺した。お願いです。主君を殺すは大罪、討伐してください。哀公が言った。あの三家老に言ってくれ。 【解説】陳成子は斉の大夫、名は恒、成は諡。簡公は斉の君主、名は壬。これは魯の哀公十四年のこと。 【書き下し】孔子の曰く、吾が大夫の後に従えるを以って、敢えて告さずんばあらず、君の曰く、夫の三子に告げよと、三子に之きて告ぐ、可かず、孔子の曰く、吾が大夫の後に従えるを以って、敢えて告げずんばあらず、 【訳】朝廷を退出して三家老のところへ行き、孔子が仰った。私も家老の末席に連なっているので、敢えて申し上げざるを得ないのですが、殿は、あの三家老に告げよ、とのことでした。こう三家老に告げたら、あっさり討伐は否定された。孔子が仰った。私も家老の末席に連なっているので、敢えて申し上げざるを得ないのです。 【解説】三家老は魯の強臣で、もとより君を君としない心があり、斉の陳氏と似たところがある。そこで孔子の討伐の提案を聞き入れなかったのだ。最後に、以吾従〜を再度言ったのは、決して自分の思いではなく、形式的な筋道を通すためだとして、三子の怒りに触れないように釈明しつつ、三子に対する戒めの意を込めている。 23(355) 子路問事君…
○ 【書き下し】子路、事を君に問う、子の曰く、欺くこと勿れ、而して之を犯せ、 【訳】子路が君主に仕えまつることを質問した。先生が仰った。必ず忠誠心を以って少しも欺かないこと。諌めるべきことがあるときは、君の顔色を犯してもこれを諌めること。 【解説】犯之は君の顔色を犯すこと。諌めるべきときには、顔色が変わることを恐れ憚ることなく諌めよという意。 24(356) 子曰君子上達…
○ 【書き下し】子の曰く、君子は上に達す、小人は下に達す、 【訳】先生が仰った。君子は高く明らかなものを目指し、やがては至高に上り達する。小人は卑しく汚いものに流され、やがては至低に下り達する。 【解説】達すとはだんだんに積んで、やがて至極に至ること。君子は何事も天の理法に順うので、日々に高明の域に進み上る。小人は何事も卑しく汚い人欲に従うので日々に地に落ち下る。水が上流から下流に流れるように、人は自然な欲望のままでいると、どんどん低く卑しい方に向かって流されてしまう。それをよしとするのが小人である。上流に向かうためには、欲望を抑制して自らを高める必要がある。それをするのが君子である。 25(357) 子曰古之學者爲己…
○ 【書き下し】子の曰く、古の学者は己の為にす、今の学者は人の為にす、 【訳】昔の学者は自分のために勉強し、今の学者は有名人になるために勉強する。 【解説】為人とは、人から知られ、その博識を人から仰がれるためにすること。 26(358) 蘧伯玉使人於孔子…
○ 【書き下し】蘧伯玉、人を孔子に使わす、孔子、之れ與坐て問いて、曰く、夫子 何をか為る、対えて曰く、夫子その過ちを寡なからまく欲すれども、而も未だ能わず、使者出でぬ、子の曰く、使いなるかな、使いなるかな、 【訳】蘧伯玉が孔子に使者を送った。孔子はその使者と部屋の中で坐して質問して、仰った。伯玉はどうしているか。使者が答えて言った。伯玉は過ちを少なくしたいと思っていろいろやっているが、なかなかうまくいかないとのこと。使者が退出した。先生が仰った。立派な使者だ、立派な使者だ。 【解説】蘧伯玉は魯の大夫、名は援、孔子が衛に居るとき、その家に住んでいた。尊者の前では立つのが礼だが、伯玉が賢なるを敬して、その使者が座して後に話を始めたのだ。 |
最終更新日:令和02年10月21日
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