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漢文として楽しむ論語 子路第十三 3/5トップページ 論語序説(朱子による孔子の略歴) 學而第一 爲政第二 八佾第三 里仁第四 公冶長第五 雍也第六 述而第七 泰伯第八 子罕第九 郷黨第十 先進第十一 顔淵第十二 子路第十三 憲問第十四 衞靈公第十五 季氏第十六 陽貨第十七 微子第十八 子張第十九 堯曰第二十 13(315) 子曰苟正其身矣…
○ 【書き下し】子の曰く、苟し其の身を正しくせば、政に従うに於いて、何か有らん、其の身を正しくすること能わざるは、人を正しくすることを如何、 【訳】先生が仰った。もしも自分自身を正しくして政治を行うのならば、何事も問題なくできる。自分自身すら正しくできないのであれば、どうやって人を正しくできようか。 【解説】政の字義は、正しくするということ。したがって世の中を正しくすることが政事なのだ。自分自身が正しくなければ、いくら「正しく」と言っても、誰も信用しないし、正しくしようとは思わないものだ。 14(316) 冉子退朝…
○ 【書き下し】冉子、朝より退る、子の曰く、何ぞ晏れつる、対えて曰く、政りごと有りし、子の曰く、其れ事ならん、如し政りごと有らば、吾れを以いずと雖とも、吾れ其れ之を聞くに與からん、 【訳】冉子が朝議から退き帰って来た。先生が仰った。いつもより帰りが遅かったね。答えて言った。重要な政事が有りました。先生が仰った。それは国の政事ではなく、季氏の家事ではないのか。現在の私は役人として用いられてはいないが、もし、本当に国の政事だったのなら、これまでの慣例により、その内容を私も聞きいているはずだ。 【解説】これは冉有が季氏の宰となっていた時のことである。朝は季氏の家での朝議のこと。この時、季氏は魯国をほしいままにして、その国政を公の場では議論せず、ひとり家臣と私宅で決めていた。孔子はそれを知らないふりして、このように述べたのだった。名分を正しくし、季氏を抑え、冉有を諭す目的での言葉である。古は卿大夫に政務が任されているとしても、国政の重要事項は必ず多くの有識者で議論して決めるものだった。その有識者には無論孔子も含まれる。 15(317) 定公問一言而可以興邦…
○ 【書き下し】定公問わく、一言にして以って邦を興す可きこと諸れ有りや、 【訳】定公が質問した。ひと言で邦を盛んにするような言葉はないものだろうか。 【解説】定公は魯の君主、襄公の子、昭公の弟。孔子を用い、やがて大司寇(大臣)に任じた君主。 【書き下し】孔子、対えて曰く、言うこと以って是の若く其れ幾てにす可からず、人の言に曰く、君為ること難し、臣為ること易からず、如し君為ること難きことを知らば、一言邦を興すことを幾てにせざらんや、 【訳】孔子が答えて仰った。ひと言でそのような効果をあてにできる言葉はない。だが、昔から言われていることがある。君主になることは難しい、臣になるのは簡単ではないと。もしも君主が君主になることの難しさを知れば、必ず戦々兢々として深い淵に臨むが如く、薄氷を踏むが如く、何事についても侮らなくなるものだ。とすれば、このひと言が、国を興すことを期待できる言葉になることだろう。 【解説】幾は期待する、あてにする、といった意。人之言曰は、昔から言われていること、諺、といった意。 【書き下し】曰く、一言にして邦を喪すこと諸れ有りや、 【訳】定公が言った。それなら、ひと言で国を滅ぼすことはあるかと。 【解説】定公は、孔子の言うことを実行するは容易ではないと思い、こう質問したのだ。 【書き下し】孔子、対えて曰く、言うこと是の若く其れ幾にす可からず、人の言に曰く、予れ君為ることを楽しむこと無し、唯其の言うこととして予れに違うこと莫きぞ、 【訳】孔子が答えて仰った。ひと言でそのような効果をあてにできる言葉はない。だが、昔から言われていることがある。私は君主となって別に楽しいと思ったことはない、ただひとつだけ言えるのは、誰も私に逆らわないことだけは楽しい。 【解説】前半は最初の質問の答えと全く同文後半が異なり、さらに次の文節に続く。 【書き下し】如し其れ善にして之に違うこと莫くば、また善らざらんや、如し不善にして之に違うこと莫くば、一言にして邦を喪すことを、幾にせざらんや、 【訳】もしも君主の言うことが善であって、これに誰も逆らわないのであれば、それはとてもよいことだが、もしも君主の言うことが不善であって、これに誰も逆らわないのであれば、そのひと言が、国を滅ぼすことになるだろう。 【解説】もしも不善にして誰も逆らわないのであれば、その不善を忠告する声は耳に届かず、君主は日々に驕り、臣は日々に諂うことになる。そうなれば政権はどんどん腐敗し、国はひたすら滅亡に向かって突き進むのみである。 16(318) 葉公問政…
○ 【書き下し】葉公政を問う、子の曰く、近き者、説び、遠き者、来る、 【訳】葉公が政事について質問した。先生が仰った。領内の人民が悦びに溢れた暮らしをしていれば、そのウワサに領外の遠いところの人民も興味津々でやって来る。 【解説】葉公は楚の臣、姓は沈、名は諸梁、字は子高。近くは領内。これは、政事の根本が民心を得るにあることを示す。 17(319) 子夏爲莒父宰…
○ 【書き下し】子夏、莒父の宰と為って政を問う、子の曰く、速かならまく欲すること無かれ、小利を見ること無かれ、速やかならまく欲するときは則ち達せず、小利を見れば、則ち大事成さず、 【訳】子夏が莒父の宰となって政事のことを質問した。先生が仰った。物事は速やかに成長させようと考えてはいけない。僅かな利便性に目を向けてはいけない。速やかに成長させようとすれば、結局は達成できない。僅かな利便性に目を向けたら、結局大事は成せない。 【解説】莒父は魯の邑の名。「ならまく」は江戸時代によく使われていた表現で、「速やかならまく」で「速やかに成されることを願う」といった意。 |
最終更新日:令和02年10月21日
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